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はじめに
わが国の慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)の患者は1,400万例を超えると推定されている1).そのなかでも加齢に伴い原因疾患としての頻度が増加している腎硬化症は,十年単位の長期経過で進行することが多く,血圧管理や生活指導などの保存的な診療が主体となる.このような状況において,全てのCKD患者を病院に属する腎臓専門医のみが診療することは不可能である.病状の比較的安定したCKD患者は,地域のかかりつけ医が主体となって診療していく必要がある.その一方で,CKDに対する適切な初期評価が行われないまま,漫然と経過観察のみが行われるのは問題である.
地域医療としてのCKD診療と,専門診療としてのCKD診療の間の線引きは明確でなく,また地域の患者分布や医療資源の状況によっても求められる診療体制は異なるため,絶対的な正解はない.しかし数多くのCKD症例のなかで,どのような症例を専門医へ紹介するか適切に判断するには,ある程度統一された一定の基準があるほうが望ましい.そこで本稿では,CKD患者における病診連携の意義と実践について考察する.
ただし,本稿の最も重要な前提として,CKD診療における病診連携のあるべき姿は地域によって大きく異なるという点を理解する必要がある.CKDについては,診療体制そのものが地域の医療資源によって大きく異なる.大学病院や総合病院が腎臓の難病や急性期の病態を重点的に診療し,診療所が病状の安定したCKDのプライマリケアに専念するという典型的な体制の地域もある一方,血液透析や腹膜透析,移植患者の通院まで含めた包括的CKD診療を実践している診療所や,常勤医の数が限られ,保存期CKDに対する保存的な外来診療に専念している病院も珍しくない.
本稿は“病診連携”がテーマであり,急性期を含め積極的な介入を要する患者を主に診療する医療機関を“病院”,安定した慢性期の診療を担う医療機関を“診療所”と便宜的に表現しているが,これらの指す対象は地域医療の実情に応じ,適宜読み替えていただきたい.
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