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はじめに
尿沈渣検査は一般スクリーニング検査として幅広い患者層を対象としており,臨床的に尿路系腫瘍が疑われていない段階で悪性細胞の検出が可能となれば,その臨床的意義は計り知れない.
尿沈渣に出現する悪性細胞は,典型像を示す核異型の「有または強」群と非典型像を示す核異型の「無または弱」群に大別される.
典型像を示す核異型の「有または強」群の悪性細胞は,正常細胞と比べて核腫大やN/C比大,クロマチン増量,核小体肥大,核形不整などを示して出現し,検出は容易である.一方,非典型像を示す核異型の「無または弱」群の悪性細胞は,変性・崩壊を示す悪性細胞やもともと核異型の乏しい悪性細胞である.これらの悪性細胞は小型で核の大きさが赤血球大〜白血球大程度で,見落とされる危険性が高い.尿沈渣に出現する悪性細胞は,尿路に面した腫瘍辺縁部を構成する悪性細胞が自然に脱落したものである.これらの悪性細胞のなかには腫瘍本体を構成する悪性細胞と異なり,変性・崩壊を示し,小型で核異型のない,または核異型の弱い悪性細胞が認められる(図1).これらの多くは結合性の強い悪性細胞で生または新鮮細胞では脱落しにくいが,壊死後に変性・崩壊し脱落するものと考えられる.また,もともと小型で核異型の乏しい悪性細胞は,悪性リンパ腫細胞や白血病細胞などの小型悪性細胞だけでなく,尿路上皮癌細胞や腺癌細胞,扁平上皮癌細胞などの悪性細胞のなかにも存在する(図2).
今回,各論として尿路上皮癌細胞,腺癌細胞,扁平上皮癌細胞,小細胞癌細胞,悪性リンパ腫細胞,白血病細胞,悪性黒色腫細胞を取り上げる.尿路上皮癌細胞,腺癌細胞,扁平上皮癌細胞,小細胞癌細胞については,典型像と非典型像に分けて解説する.
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