アーチファクト
尿沈渣
八木 靖二
1
1癌研究会附属病院中検
pp.39
発行日 1983年1月1日
Published Date 1983/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543202669
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この症例では,写真1のような茶褐色を呈する判定困難な沈渣成分が多数認められた.400倍での鏡像を写真2,3に示す.写真2には深層型細胞集塊を思わせる成分が認められ,写真3には中心に向かって冊状配列を示す奇妙な形状が認められた(×400),写真4,5は同一沈渣にS変法染色を施したものである.これらの成分はアルシャン青とピロニンBに染め分けられ,深層型細胞集塊と類似の染色態度を示した.このような特殊な形状および配列のため判定に苦慮した.そこで,残りの沈渣を詳細に鏡検した結果(写真4,5×400),写真6のような植物繊維やデンプン粒などの食物由来と思われる成分が認められた.さらに,細菌(杆菌)も多数みられたことから,糞便の混入を強く疑った.臨床医に問い合わせたところ,患者は採尿時,下痢症状がみられ,糞便の尿中への混入が判明した.再度,尿を採取し沈渣鏡検を行ったが上記に示した異常な沈渣成分は認められなかった(×100).
尿中へ糞便が混入した場合,S変法染色において,写真4,5のような染色態度を示すことがあり注意を要する.このような糞便の尿中への混入は,女性に高頻度にみられる現象である.
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