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検査室では多くの水を試薬の作製や自動分析に利用しますが,水はその純度から超純水・イオン交換水・EDI(electrodeionization)水・蒸留水などに分けられます.また,水はその用途によって使い分けられます.超純水とは不純物が含まない水のことであり,逆浸透(reverse osmosis:RO)膜処理,蒸留処理,イオン交換処理などの方法を組み合わせて作製し,イオンなどを除去した比抵抗値1〜3MΩ・cm程度の純度をもった水です.超純水や蒸留水は基礎の研究室などの限られた実験で使用されます.一般の臨床検査ではイオン交換水やEDI水が用いられますが,自動分析以外では,主に生理食塩水や緩衝液の作製や,標準液やコントロールの溶解などにも用いられます.緩衝液は,少量の酸や塩基を加えたり,また,溶液を希釈したりしても水素イオン指数(potential of hydrogen:pH)が大きく変化しない溶液のことをいい,免疫検査試薬・生化学検査試薬・染色液試薬などに幅広く用いられています.緩衝液は,化学反応がpHに左右されやすい場合,もしくは反応中のpHの変化を無視したい場合に用います.
緩衝液の緩衝材を選択する方法には,弱酸とその塩(共役塩基)の組み合わせと,弱酸と強塩基の部分中和を利用した組み合わせの2つの方法があります.緩衝液が機能するためには,弱酸の解離平衡現象が必須です.平衡が偏った条件では緩衝剤として機能しませんが,弱酸のpKa(酸解離定数の−log値)±1程度のpHでは緩衝剤は有効に機能します.したがって,目的のpHから適当なpKaをもつ緩衝剤を選択することが重要となります.一般的には酸は“H+”を,アルカリは“OH−”を放出するものとして考えられていますが,pKaはBrønsted-Lowry acid-base theoryに基づき,“H+”が離れるのか,戻るのかという観点から酸とアルカリを考えたものです.
また,pKa=−logKaという関係性が成り立ち,このKaも酸の解離定数(“H+”の電離度合い)として,値が大きいほど強い酸となります.酢酸を例にとると,Ka=1.74×10−5はpKa=4.76となります.
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