検査説明Q&A・22
免疫電気泳動検査で,抗ヒト免疫グロブリン重鎖(抗γ,α,μ,δ)特異抗血清と反応してα領域に沈降線が認められます.これは,どのようなことが考えられますか?
伊藤 喜久
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1永寿総合病院臨床検査科
pp.1494-1497
発行日 2016年11月15日
Published Date 2016/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542201037
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■はじめに
免疫電気泳動法(immunoelectrophoresis:IEP)は,電気泳動法とゲル内沈降反応を組み合わせた検査法です1).その原理・方法は以下の通りです.寒天ゲルの細孔にサンプルを添加し,電気泳動法でアルブミン,α1,α2,β,γの5分画に分離した後に(目には見えない),さらに分画ラインに平行して外側の細長い溝を切り特異抗血清(抗体)を添加します.抗原(蛋白質)と抗体はゲル内を拡散し,やがて両者が出会うと,ここに抗原抗体複合体(免疫複合体)が形成され沈降線が出現します.この場合,対応する抗原(個別蛋白)が一定濃度以上存在し,特異抗体と適正比率で反応することが条件となります.抗原が単一分子で構造が均一であれば沈降線は原則一本で弧状に観察されます.もし,抗原分子が重合し,他の成分と結合,あるいは分解していると,分子量,抗原構造,荷電の変化によって複数で一部癒合した沈降線が認められ,移動度も変化してきます.沈降線の数,移動度,形状,特異抗体に対する反応性などを総合して対象抗原の構造や物性などを読み解きます.
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