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戦中・戦後の空白期間を経た1953年に真空管式心電計が米国から日本に寄贈され,初めて心電計が臨床に使われるようになった.これを契機に,その後,国産心電計や脳波計が次々に開発され,患者検査としての生理機能検査が普及しはじめた.しかし当時から大学病院の中央検査部は欧米の流れを受け検体検査が主であり,そのため検査業務に関するリスクマネジメント(危機管理:risk managementの日本語表記は“リスクマネジメント”ないしは“リスクマネージメント”となるが,本号では医療機器の規格であるJIS T 14971にならい“リスクマネジメント”で表記を統一する)も本誌や関連検査学会の中では検体検査の精度管理や感染症に関する記事が多かった.これに対して生理機能検査は患者を直接対象としていることから,むしろ多くの臨床系医学会(循環・呼吸・脳神経などの多くの関連学会や超音波医学会)や医療機器システム関連学会,例えば日本生体医工学会(旧日本エム・イー学会)などの臨床医学技術および医工学分野の中でリスク管理を議論することが多かった.その意味で今回本誌が生理機能検査に特化したリスクマネジメントを取り上げたことは,臨床の場で直接患者と向き合う医師や生理検査技師ばかりではなく,看護師などコメデイカルにとっても大変役立つ企画と思われる.
通常医療におけるリスクマネジメントの目的は基本的に次の3つに分けられる.すなわち社会的に最も求められるものとして第1に“患者に対して安全な医療を提供すること”,第2に“病院という組織体の資産を守ること”,第3に“病院を法的に守ること”などである.病院における危機管理体制の方策については厚生労働省が2000年8月に発表した「リスクマネージメントマニュアル作成指針」が参考になるが,患者と直接接触の多い具体的な生理機能検査に関する記述は少ない.ある統計によると医事紛争の70%は医療過誤がないのに発生しており,その原因は患者と医療従事者の間に存在する接遇の問題や種々のコミュニケーション不足にあるとも言われている.したがって,その意味では患者を直接対象とする生理機能検査に関するリスクマネジメントについて知ることは病院全体の危機管理を見直すうえで役立つものである.
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