今月の主題 脳卒中
巻頭言
本邦脳卒中の現況と治療の最前線
篠原 幸人
1
Yukito SHINOHARA
1
1国家公務員共済組合連合会立川病院
pp.1470-1471
発行日 2010年11月15日
Published Date 2010/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542102463
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“卒中”という言葉は中国伝来であろうが,本邦でも西暦760年,すなわち平安時代の書物にすでにその記載がみられる.“卒”は突然倒れることを卒倒と言うように“突然”という意味,“中”は毒に当たることを中毒というように“当たる”という意味なので,“卒中”とは“何かに当たったように突然,倒れる病気”と理解できる.西洋医学が導入される遥か昔の人々が,原因が脳の病気と知っていたか否かは別として,少なくとも現在の脳卒中(脳血管障害)を非常に身近な疾患として捉えていたことは十分に想像される.
この脳卒中は,第2次世界大戦後に本邦で猛威を振るった結核にかわり,1950年頃より本邦の成人死亡率の第1位を占めてきたが,1980年頃に悪性新生物に,1985年頃より心疾患に抜かれて,現在成人の死亡原因第3位であることはよく知られている.しかし死亡率は著明に減少したものの,発症率は大きな低下を示していないため,治療中の脳卒中患者数は鰻上りに上昇し,また依然として本邦の寝たきり患者の最大の原因疾患でもある.
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