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排尿障害とは,下部尿路(膀胱と尿道)の機能障害を表す言葉である.その症状は,下部尿路症状(lower urinary tract symptom;LUTS)といい,日常診療上に出会う頻度が非常に高い症候と言える.LUTSは,トイレが近い症状〔蓄尿症状(storage symptom),尿意切迫・頻尿・尿失禁など.このうち尿意切迫を中心とした症状群を過活動膀胱(overactive bladder;OAB)という〕と,尿を出しにくい症状〔排尿症状/排出症状(voiding symptom),排尿困難・尿閉など.このうち残尿感・排尿後滴下を排尿後症状(post micturition symptom)という〕の大きく2つに分けられる.また,膀胱と尿道は機能的な1対と言える.すなわち,正常な蓄尿時には,膀胱の弛緩と尿道括約筋の収縮が同時にみられ,そのいずれかが障害されると蓄尿障害をきたす.注意すべき点として,多量の残尿があると機能的な膀胱容量が減少し,2次的に蓄尿障害をきたすことが少なくない.このため,頻尿・尿失禁のみを訴える場合も,超音波残尿測定を1度行うことが勧められる.
排尿障害をきたす代表的な疾患として,男性の前立腺肥大症(benign prostatic hyperplasia;BPH),女性の骨盤底筋障害(pelvic floor dysfunction),男性・女性の神経因性膀胱(neurogenic bladder dysfunction;NB),の主に3つが挙げられる.BPHの症状としては,排尿困難が典型的にみられる.骨盤底筋障害の症状としては,腹圧性尿失禁が典型的にみられ,骨盤臓器脱(pelvic organ prolapse;POP)との密接なかかわりがある.NBは,日常診断上において頻度が非常に高い症候であり,その障害部位に応じて,脳病変ではOABがみられ,末梢神経病変では排尿困難がみられ,脊髄病変ではOABと排尿困難を同時にきたすことが多い.このうち,OABの機序として,さらに膀胱上皮,間質細胞,上皮下神経,平滑筋の分子機序が近年明らかにされつつある.尿意と中枢神経系との関連については,機能的脳画像が,排尿障害と脳科学を橋渡しするものとして注目されている.
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