特集 医療・福祉施設における感染制御と臨床検査
総論
4.施設内感染に関連する微生物
3) ウイルス
中山 哲夫
1
Tetsuo NAKAYAMA
1
1北里生命科学研究所ウイルス感染制御Ⅰ感染制御科学府
キーワード:
伝播経路
,
ウイルス遺伝子
,
組織親和性
Keyword:
伝播経路
,
ウイルス遺伝子
,
組織親和性
pp.1269-1274
発行日 2009年10月30日
Published Date 2009/10/30
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542102107
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ウイルスの分類
微生物が発見され多くの疾患は微生物が感染することで発症することが明らかとなったのは19世紀になってからである.患者から得られた血液,咽頭拭い液を実験的に感染させると発症することから感染性疾患であることがわかっても顕微鏡下で細菌が検出できず,また培養もできず,素焼きの濾過器で濾過した後の検体でも感染することから濾過性病原体の存在が知られてきた.タバコの葉に感染し枯れさせるタバコモザイクウイルスが結晶化されウイルスが生命体なのか議論されてきたが,細菌,真菌とは異なり培地で増殖はできず細胞に感染することで自己保存できる生命体で,分子生物学的研究が進みウイルスは「生命反応を有する高分子集合体」として捉えることができる.
ウイルスの発見当初は電子顕微鏡により,ウイルスの大きさにより大型,中型,小型ウイルス,その形態から球形,正20面体,スパイクの有無,外殻蛋白(エンベロープ)の有無などの形態から分類されていた1).タバコモザイクウイルスの結晶は蛋白で構成され蛋白により感染し増殖すると考えられていたが,結晶中の5%を占める核酸が感染にかかわる物質であることがわかり,核酸の性状によりRNAを遺伝子として持っているウイルスとDNAを持っているウイルスに大別され表1に示した.ウイルスの分類の根拠となる基準は
①形態:ウイルス粒子のかたち,大きさ,エンベロープの有無
②物理学的性状:ゲノムの性状,安定性
③構成蛋白の種類と機能
④転写・翻訳の特徴
⑤増殖の仕方,宿主動物域
である.
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