- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
近年,「メタボリックシンドローム」という言葉が市民権を得て,一般の健康志向の強い人にも「悪玉コレステロール」,「善玉コレステロール」の意味が知られるようになってきた.「悪玉コレステロール」と言われるLDLコレステロール(low-density lipoprotein-cholesterol;LDL-C)は低比重リポ蛋白コレステロールの略で,コレステロールを体組織に輸送する役目を持ち,アポB蛋白を持っていることが特徴である.一方,「善玉コレステロール」と言われるHDLコレステロール(high-density lipoprotein-cholesterol;HDL-C)は高比重リポ蛋白コレステロールの略で,体組織から前記コレステロール成分を取り去ってくる役目を持ち,アポA1蛋白を持っていることが特徴である.そのほかコレステロール量としては少ないがVLDL(very-low-density lipoprotein),カイロミクロン(chylomicron;CM),IDL(intermediate-density lipoprotein),Lp(a),レムナント(remnant)などのリポ蛋白画分があり,それぞれ特有な脂質代謝の役割や意義が研究されている.生化学脂質項目の代表的なマーカーであるHDL-CとLDL-Cは,現在日本のほとんどの臨床検査室で測定されるようになっており,2008(平成20)年4月に義務化されたメタボリックシンドローム健診の主要項目として挙げられ,自動化も広く行われている.
本題のリポ蛋白測定の簡易化では,このHDL-CおよびLDL-Cの自動化されたホモジニアスな直接法に焦点を当てて述べるが,特筆すべきは,現在全世界で使用されているこの直接法のHDL-C,LDL-C測定試薬は,日本において先陣を切って開発され,現在,世界中の検査室の中で使用されている試薬のほとんどを日本メーカーが供給していることは,最近のわが国の試薬メーカーが技術的存在感を見せている例として記憶に新しい.
Copyright © 2008, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.