今月の主題 脂質
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胆汁酸による肥満抑制機構―甲状腺ホルモン活性化とエネルギー代謝
渡辺 光博
1
Mitsuhiro WATANABE
1
1慶應義塾大学医学部
キーワード:
胆汁酸
,
胆汁酸核内受容体(farnesoid X receptor;FXR)
,
D2
Keyword:
胆汁酸
,
胆汁酸核内受容体(farnesoid X receptor;FXR)
,
D2
pp.523-527
発行日 2007年5月15日
Published Date 2007/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101202
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1.はじめに
驚くべきことに,ギリシャ時代に胆汁酸は哲学と医学の分野に登場していた.ヒポクラテスは人体における体液の基本組成を「血液,粘液,黄色胆汁,黒色胆汁」の四つに分類し,そのいずれかが過剰になると性格を左右すると記している.例えば,黒色胆汁過剰の場合,暗い気質,憂鬱,非社交的,感受性が強く,黄色胆汁過剰の場合,怒りやすい,短絡的,エネルギッシュで活動的な性格になる,と.現在,われわれが胆汁酸と称しているのはこの黄色胆汁であり,約2,400年前の性格と関連付けた見方が,われわれの研究に一致しているところがあるのは非常に興味深い.しかし,この優れた洞察に溢れた研究はその後発展をみず,数年前まで,胆汁酸は単に食事により摂取されたコレステロール,脂質をミセル化し,それらの消化吸収に関する物質として考えられてきた.
しかし,動物の肝臓,胆囊に含まれる胆汁酸は作用メカニズム不明のまま古代ギリシャで医薬品として用いられ,インドに伝わり伝統的医学アーユルヴェーダにも登場し,シルクロードを経て,中国,さらには東の果て日本へと伝来され,今日まで用いられている最古の医薬である.
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