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酸化LDL,炎症と粥状動脈硬化プラークの破綻
血中LDLコレステロール値の上昇は,虚血性心疾患などを中心とした粥状動脈硬化を基盤とする疾患の主要な危険因子であることはよく知られている.スタチンなどの薬剤による肝臓でのLDL受容体の発現誘導と血中LDL値の低下が明らかにされ1),LDLの低下による心血管イベント発症の予防が報告されている.さらに,近年の病理学的,分子細胞生物学的研究により,酸化ストレス,酸化LDLと炎症が,心血管イベントの原因となる粥状動脈硬化の進展とそのプラーク破綻に重要な役割を担うことが明らかとなってきた2).特異的なモノクローナル抗体を用いた免疫組織染色により,粥状動脈硬化の病変部位には,酸化LDLのみならず,酸化ストレスにかかわるp22phox,炎症にかかわるC反応性蛋白(C-reactive protein;CRP)などが存在することが示されている.またCRPは主に肝臓にて産生される蛋白であるが,一部には血管壁でも産生される3).そして,酸化LDLはコレステロールエステルの血管壁内での蓄積に寄与するのみならず,種々の炎症性の変化を惹起してプラークの破綻へと誘導する.また,催炎症性の変化は,さらに酸化ストレスを誘導するという,悪性の増幅サイクルが形成される.
このように,LDLの酸化変性と催炎症性の変化は主に血管壁内で惹起されるものと考えられるが,酸化LDLの一部(特に酸化変性の程度の軽度なもの)は血中にも漏出して存在し,ELISAによるその測定法が確立されている.血中の酸化LDL濃度は,抗酸化ホスファチジルコリン抗体と抗ヒトアポB抗体のサンドイッチELISAにて確立されているが,虚血性心疾患,糖尿病で上昇し,急性冠症候群では特に高値を示す4~6).
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