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画像による検査では,本来の構造物以外による虚像(アーチファクト)が出現することはよく知られている.特に,音の直進性は光,X線のそれに比べ劣るため,超音波検査では,組織の組成,構造の異なる境界面での反射や屈折が起こりやすい.しかし日常の超音波検査では,これを逆手にとって利用することで,対象物の性質を知ることができるため,超音波検査に携わるものはその現象に精通することが求められる.ここでは,最もよく知られている4種類のアーチファクトを挙げた.
Bモード断層像に表示されるアーチファクトを理解する前に知っておきたいのは,超音波断層像の作られ方で,これにより多くのアーチファクトが理解できる.画像作製で最も基本的なことは,画像は発射した超音波が探触子に返ってくるまでの時間を距離に換算して表示されていることであり,早期に返ってきたエコーは浅部に存在するように,遅れて返ってきたエコーは深部に存在するように表示される.この前提と異なる状況で起こるのがアーチファクトであり,括弧内に出現するものを示す.画像を作製するうえでの他の前提としては,対象臓器すなわち生体での音速は均一で1,530m/sであること(音速によるdisplacement),超音波はまっすぐ進むこと(屈折),反射して探触子に返ってくるのは1本のみであること(サイドローブ)などが重要である.しかし,これらの前提は,超音波像が生体の構造の不均一性により作られることと相反するところであり,肝臓,腎臓,血液などの構造物は音速が1,560~1,570m/s前後とほぼ一定であるが,脂肪組織は1,450m/sと低く,線維性組織の音速がやや速いことなどは,超音波のアーチファクト出現に関与することになる.骨にいたっては3,360m/sと2倍以上の音速であり明瞭な画像をえられないだけでなく,強い反射が一因で音響陰影が出現する.
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