特集 医療計画の新しい方向と病院
医療計画の検証と今後の医療提供体制
池上 直己
1
1慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教室
pp.626-634
発行日 1999年7月1日
Published Date 1999/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541902747
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日本における医療計画の基本的問題
医療施設を整備する方法として,各医療機関の裁量に任せて行う方法と,政府が計画的に行う方法とがある.前者に従つて医師は診療所を開設し,それを病院に発展し,さらに拡大させてきた.一方,後者に従って公的病院が整備されてきた.日本は明治以来この二つの方法を併用してきたが,いずれの方法に比重を置くかをめぐって医療提供者と政府は対立してきた.一つの方法に収束できなかった理由は,民間だけで整備しようとしても,診療報酬の構造上,高度医療などは不採算となるので障壁が高く,一方,公的中心に整備しようとしても財源が足りなかったことにある1).
1985年の医療法の第1次改正で医療計画の策定が義務づけられたことによって,これら二つの方法を調整し,社会的な合意のもとに官民が協力する社会計画としての枠組みだけは用意された2).しかし,医療計画導入の主な目的は医療費の抑制に置かれ,「医療計画」は実質的には「病床規制」にとどまつてきた.すなわち,「ベッドが作られればベッドは埋められる」という関係があるので3),ベッドの総量を抑制することで医療費の抑制が図られてきた.こうした経緯で,医療計画への記載が義務づけられた事項は,1997年に第3次医療法改正が行われるまでは「必要病床数」の提示と,「医療圏」の設定だけであった.
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