特集 病院組織と意思決定—コーポレイトガバナンスとは何か
病院経営とコーポレイトガバナンス
遠藤 久夫
1
1学習院大学経済学部
pp.213-215
発行日 1999年3月1日
Published Date 1999/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541902641
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コーポレイトガバナンスとは何か
1980年代,わが国の企業経営上のキーワードとしてコーポレイトガバナンス(以下CGと略す)という言葉が登場した.筆者の理解するところでは,CGはやや異なる二つの意味で使われている(表1).一つは株主(すなわち企業の所有者)が株主の利益を代理するように経営陣(取締役)をコントロールするためにはどのような方法が有効かという意味での使われ方である.これは株式会社の巨大化に伴い「所有と経営の分離」が進行した過程で生じた問題であり,株主—経営陣の代理人問題(agency problem)として経営学の研究対象とされてきた領域である.この意味で使われる場合を,狭義のCGの問題としておこう.
これに対して,CGの概念をより広義に解釈し,企業行動の社会的コントロールの方法と位置づける見方もある.すなわち,企業を取り巻く様々なステークホルダーズ(stake-holders,利害関係者)から企業に及ぼす牽制が企業行動にどのように影響を与えるかというアプローチである.こちらは,企業がその社会的責任を適切に履行するためにはどのような社会の仕組みが望ましいか,という企業倫理や社会的責任との関連で登場する場合が多い.
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