主張
後継者の育成と選任
I
pp.829
発行日 1996年9月1日
Published Date 1996/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541901903
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最近,近辺で組織のリーダーの方が相次いで亡くなられるという事件があった.それだけ人間の平均余命に近づいてきたということかもしれない.この時いつも語られるのが後継者の育成と選任である.はたして,どのようにすれば事業のスムーズな継承ができるのであろうか.「ワンマン」と呼ばれる強烈な個性のある組織リーダーに共通する特徴は,後継者の育成を怠るという面である.長くわが国医療界をリードされた方の共通点は,力をもつ後継者候補を必ず斬るということがあった.おそらく強力な権力をもつ人にとっては,力ある者をまず倒すというジャングルの掟が必要なのかもしれない.
組織のリーダーは最も適当な人を選任することが第一である.そのためには,ある程度後継者を決めて帝王学を修めさせるのがよいのか,あるいはジャングルの掟のように最も適当な人が選ばれるよう環境を整備するのがよいか議論は分かれるところだろう.わが国の政界の流れをみると,どうも両者が交互に訪れるようである.おそらく組織も何年か経つと現状維持派が主力となり,弱体化してその混乱の中から強力なリーダーシップ待望論が生まれてくるのではないか.会社30年生存説は,この人間の組織維持力の弱さを物語るものであろう.理想的には組織は乱世型のリーダーと平和時の継続維持型の二人を常に用意する必要があるのかもしれない.
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