病院進化論・3
矮小種からの進化はあるか
古川 俊之
1,2
1国立大阪病院
2東京大学
pp.663-667
発行日 1996年7月1日
Published Date 1996/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541901860
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
日本も社会資本の蓄積が進み,一応表面上は豊かになった.しかし病院への投資努力は極めて乏しい.現代人は日常は病院に関係がない.友人や身内の入院の時ぐらいしか訪ねる機会がない.ところが,自分がいよいよ死ぬ番になると,狭く暗く騒がしい病院で最期を迎えなければならない.後悔しても手遅れである.
さて現代日本の病院のありさまはいかに? どの病院も受診者は混雑し,待ち時間は長い.入院期間も先進国では異常に長い.どちらも最大の原因は狭隘な面積と少ない職員数である.日本で心臓移植に反対する医師の論拠は,病室の無菌性や清潔度が先端医療にふさわしくないこと,支援スタッフが質,量ともに決定的に乏しいことである.特に支援スタッフの数は,アメリカと日本では6倍もの差がある.先端医療には人的,物的な資源を集中しなければならないのに,インフラストラクチャーが整備されていないのである.その意味では単に矮小種のみならず,成長不全というべき点も種々ある.後述する清潔・不潔のゾーニングから,ベッドセンターがないなどは重要な欠陥であり,暴言を弄すると奇形種である.突然変異は進化の源であるが,欠陥種は絶滅への一方通行の運命にある.
Copyright © 1996, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.