医療技術革新の展望とこれからの医療政策—ヒト遺伝子研究の意味するもの
アメリカにおけるバイオエシックスとテクノロジー・アセスメントの展開
広井 良典
1
1厚生省社会・援護局更正課
pp.791-795
発行日 1995年8月1日
Published Date 1995/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541901586
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政策としての生命倫理(承前)
「国家委員会」の任務と成果
1974年に設置された「生物医学及び行動科学研究における被験者の保護に関する国家委員会」は,医療における生命倫理問題について,各方面からの専門家およびスタッフが綿密な調査研究そして政策提言を行う国家レベルの委員会の最初の試みであり,しかもその大きな「成功」から,アメリカにおいてこれ以降続くことになるこの種の委員会のモデル的存在となったものである.同委員会は厚生省に置かれ,委員は厚生大臣の任命する11名とされ,うち5名は医学・生命科学研究者,3名は法律家,2名は倫理学者,1名は行政関係者であり,このほかに16名のスタッフが置かれた.議会から与えられた課題は,①ヒトを対象とする臨床研究における基本的な倫理原則を確定するための包括的な調査研究を行うこと,
②そうした原則が遵守されるためのガイドラインを策定すること,
③必要な行政上の装置にっいて厚生大臣に提言を行うこと,を主な柱とするものであった.
前回ふれたように,国家委員会設置の直接の引き金の一つが胎児の胚を使った研究をめぐる大きな社会的論議だったこともあり,緊急の課題として,国家委員会は設置4か月以内に胚を用いた研究の在り方についての提言をまとめ厚生大臣に報告すべきものとされた.
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