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■はじめに
高齢化の進展は医療介護ニーズの複合化をもたらす.急性期入院医療を主に行うDPC病院においても高齢化への対応が求められるようになっている.具体的には,複数の慢性疾患を持った高齢患者への総合診療的な対応や,認知症高齢者・要介護高齢者へのADLケアの対応が必要となっている.筆者らはすでに,「重症度,医療・看護必要度」の情報を使って,B項目で評価されるADLの自立度の状況が,在宅への退院確率に有意な影響を持っていることを報告している1).しかし,中央社会保険医療協議会では,患者の状況などを評価するB項目について,急性期の医療ニーズに着目した評価体系とする観点から,その意義について疑問が出されるなど,急性期医療の現場における高齢化の実態とその影響について,客観的な情報が必要な状況となっている.
このような厚生労働省による見直しは,地域医療構想において急性期から回復期への病床機能の転換が進んでいないことへの対策と考えることもできる.新たに検討が開始される2040年を目標年度とした地域医療構想の議論では,「回復期」の機能の再定義と名称の変更などが行われると予想されるが,7:1の看護配置基準の要件の見直しと新たに創設された地域包括医療病棟への対応は各構想区域での地域医療構想の検討に大きな影響を及ぼすことになるだろう.特に,高齢者の一次救急・二次救急を数多く受けている中小民間病院は,医師の働き方改革の影響も踏まえながら,自施設の機能について既存のデータを用いて再検討することが求められる.
そこで,本稿では2020(令和2)年度のDPCデータを用いて,65歳以上高齢者のDPC入院症例について,その患者像を分析した筆者の研究を基に,各地域における病院の在り方を検討するための基礎資料とその考え方について説明し,次回以降の事例報告の内容を考えるための論点整理を行う.
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