特集 病院経営から考える医薬分業
医薬分業のあるべき姿
統計データから見た医薬分業の問題点
坂巻 弘之
1
1神奈川県立保健福祉大学大学院ヘルスイノベーション研究科
キーワード:
医薬分業率
,
処方箋発行数
,
薬局数
,
調剤報酬
,
薬価差益
Keyword:
医薬分業率
,
処方箋発行数
,
薬局数
,
調剤報酬
,
薬価差益
pp.662-667
発行日 2023年8月1日
Published Date 2023/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541211983
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■はじめに
2012年1月に刊行された『医薬分業の歴史—証言で綴る日本の医薬分業史』1)は,わが国の医薬分業の歴史を学ぶうえで欠かすことのできない書であり,重要な資料集ともいえる.本書によれば,1974(昭和49)年の処方せん料引き上げをきっかけとして,その後,医薬分業が進展したことから,この年を「分業元年」とする考え方が主流とされる(1974年より前は処方箋料交付1回につき6点だったものが50点に,調剤報酬も処方箋受付1回につき80円が200円にそれぞれ引き上げられた).
その後も,伸び悩む分業率に対して関係者のさまざまな努力があった.その一方で,いまだ医薬分業に対する批判的な意見は多い.2015年3月の規制改革会議で医薬分業の在り方が議論され,医薬分業が二度手間になる一方で便益が享受できていないなどの指摘があった.こうした批判的意見もあり,厚生労働省は,同年10月に「患者のための薬局ビジョン」を公表し,「かかりつけ薬剤師としての役割の発揮に向けて,対物業務から対人業務へ」のシフトを今後の方向性として掲げた.同ビジョン公表後8年経つが,例えば,2023年の財政制度分科会での指摘2)にもあるように,当初の医薬分業の目標や対人業務へのシフトも十分には達成できているとは言えない.
本稿では,改めて,薬局数や調剤医療費などの統計データを見ながら,医薬分業の課題について考察してみたい.
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