連載 遥かなる霞が関・3
GAFAはお辞儀をしない—医療の周辺のサービスはなぜこれほど低レベルのままなのか
佐藤 敏信
1
1久留米大学
pp.242-245
発行日 2020年3月1日
Published Date 2020/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541211158
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■病院の語源は「もてなす」なのに
2001年の冬,私はフランスのシャルル・ド・ゴール空港のターミナル2Cで成田空港行きの飛行機を待っていた.雨が降っていて,その雨がいつしか雪に変わろうとしていた.スポットが埋まっていたため,飛行機はいわゆる沖止めとなり,乗客はバスで飛行機に向かうことになった.そこに現れたバスを見て驚いた.普通のバスではなく,モバイルラウンジ*1というものだった.ターミナルに来ると,台車の部分に付いているマジックハンドのような機構が動いて車室部分を押し上げ,横付けして密着する構造になっていたのだ(写真1).乗客が乗り込むと,このマジックハンド部分が縮んで普通のバスの姿になり,そのまま飛行機まで走っていき,ドアに近づくと,また脚を伸ばして乗降口に密着するのだった.
たったこれだけのことだが,日仏の差を感じた.日本では,沖止めになるとバスで,それも立ち客がぎゅうぎゅうになるほどに詰め込まれ「移送」され,その先も写真2のような屋根のないタラップを上って搭乗である.雨の日などは傘もさすことになり,さらに大変である*2.翻ってフランスでは,荷物を持っている旅行者を立たせたり,歩かせたり,いわんや階段を上らせるなどという発想はないのだ.
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