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手術は外科の生命である。そり手術を思う様に実施し得る所が手術室の理想である。思う様にと云う意味は手術が科学的合理的に何等の支障なく規に叶い縄に則って術者の藝術的感覚を鈍らせる事なく円滑に遂行される事である。従って実際には科学の進歩と術者の知識とそうして良心の如何によって設計にも種々の段階があり,又国々の文化環境も之を左右するであろう。茲には吾々が持つ外科常識で日本で出来るであろう所の普通の手術室を設計し此中で之をどう運轉するかに就て述べて見たいと思う。外科を志すもの或は手術室を設備しようと思うものにとって多少とも参考たり得れば幸である。乍併私は今日迄遂に自ら設計した手術室で手術した事はなくいつも既存の手術室でのみ手術を実施して居る者であることを諒承されたい。そうした経験からすると一般的にはなかなか良い手術室と云うものはないものである。室が小さ過ぎたり,天井が低かったり,床が不潔であったり,暖房が悪かったり或は夏では暑かったり,諸設備が不満足であったりするものが少なくない。
抑々手術室として要求すべき諸条件中最も緊要なものは,清潔,採光及び暖房保温である。換気に就ても充分の考慮が必要である。従って手術室の構造は之等の条件を満たす様々ものであることを要する。斯る室に手術台其他手術に直接必要な一切の装備をするのである。此固有手術室には更に之に附属する準備室其他が必要である。即ち術者側の準備室としては更衣室,手洗消毒室,又手術繃帯材料等の消毒室,器械消毒室,患者の準備室等は何としても主手術室に直接させねばならぬ,尚手術器械室,薬品室,材料室,看護婦室,洗濯室等も接続存置する方が便利である。以下固有(主)手術室及び附属諸室の各々に就て簡潔なる説明を試みたいと忍う。
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