連載 医療・病院をめぐる文献ガイド・2
プライマリ・ケア領域を知る文献
葛西 龍樹
1
1福島県立医科大学医学部 地域・家庭医療学講座
pp.842-845
発行日 2015年11月1日
Published Date 2015/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541209964
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■プライマリ・ケア領域の動向
日本の病院経営者にプライマリ・ケアについて理解を深めてほしい理由は2つある.第1に,多くの国々における保健医療制度改革の例が示しているように,限られた財源の中で,安心できる暮らしの基本となる国民の健康を安全に守るためには,プライマリ・ケアの整備が必須だからである.第2には,2017年度から国を挙げて取り組まれる新専門医制度である.19ある基本領域専門医の1つとして加えられた「総合診療専門医」という名称の専門医が果たすべき役割,それは「プライマリ・ケアの専門医」なのである.
プライマリ・ケアの専門医の本格的な養成については,日本では筆者も関わって1996年に設立された北海道家庭医療学センターが翌1997年から開始した家庭医療学専門医コースを起源とするが,それを全国的に広げる努力がなされ,2009年から旧・日本家庭医療学会が,学会として3年間の家庭医療後期研修プログラムの修了者に試験を課して,その合格者を家庭医療専門医として認定する制度を開始した.会員歴や試験のみではなく,専門研修の修了を専門医試験の受験資格にした制度は,日本の医学会の中でも先駆的な取り組みだった.2010年に関連3学会が合併して日本プライマリ・ケア連合学会が設立され,2011年から旧・日本家庭医療学会の制度を引き継ぐ形で,家庭医療後期研修と専門医試験によって家庭医療専門医を認定する制度を運営して現在に至っている.
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