辛口リレーエッセー 私の医療論・病院論
大学と病院
廣戸 幾一郎
1
Ikuchiro HIROTO
1
1社会保険小倉記念病院
pp.1230
発行日 1989年12月1日
Published Date 1989/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541209749
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"CureよりCareへ"という標語は,9年前,病院に勤め出してから知りました.高齢者社会を迎えて,疾患が慢性化したための医療のあり方を示す言葉で,当時すでに病院間では常識化しつつあった標語です.それを大学にいる時はついぞ知らなかったわけです.大学で取り扱う患者は,主として,選別された重症患者に限られており,病院のように疾患像の社会的変化を意識することはほとんどありません.今でもその状況は変わっていないのではないでしょうか.
大学と病院の際立った差は看護態勢の差だと思います.大学でも,看護部は主体性を保持していたはずですが,医師の数も多く,その研究面・医療面での活動が華々しく,比重が大き過ぎるために,その陰に隠れがちだったことは否定できません.特に,医師法第17条「医師でなければ医業をなしてはならない」を楯にとり,静注・採血を拒否しているのが差の最たるものでしょう.大学ならこれでも良いのかもしれません.医師も多く,特に研修医の注射の修練には好都合だからです.
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