特集 病院財務管理のあり方
病院経営改善に役立つ分析手法(事例と解説)
松本 力
1
,
下間 幸雄
2
,
井手 義雄
3
,
米田 啓二
4
Tsutomu MATSUMOTO
1
,
Yukio SHIMOTSUMA
2
,
Yoshio IDE
3
,
Keiji YONEDA
4
1医療法人愛仁会本部事務局財務部
2医療法人愛仁会本部事務局
3医療法人雪の聖母会聖マリア病院企画部
4全国自治体病院協議会事務局
pp.1200-1212
発行日 1989年12月1日
Published Date 1989/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541209744
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管理会計へのアプローチ
(院内公開会計資料事例紹介)
経営・管理システムの前提
昭和62年9月24日に発表された厚生省の『医業経営の近代化・安定化に関する懇談会報告書』は,"本格的な経営・管理の時代"を迎えているにもかかわらず,一向に近代化が進まない民間病院経営に対する警鐘であった.しかし,民間病院経営者の反応は"おおむね冷やか"というのが実態であった.事実,最近に至っても,民間病院団体の事務長会で「自院の月次損益や決算書など見たことがない」と述懐する事務長が意外と多い.病院の収益状況や財務運営は,オーナー院長と顧問会計士と院長夫人の間の極秘事項で「院内非公開」だということである.この辺に,オーナー院長の私産を運用して病院を拡張してきた日本の民間病院の経営構造の特殊事情があるわけだが,「近代化懇」が述べているように,昭和40年代から50年代前半の医療経済高度成長時代とは,環境も条件も大きく異なる現在,医業経営には優れた経営センスが必要であり,病院全体を整然と,しかも効果的に運営することに十分な配慮が行き届いている経営・管理システムが必要である.
経営・管理システムの前提となることは,①経営者と部門管理者(以下,管理者と略す)の間の意思疎通がスムースであること,②経営者と管理者が担当部門(部署)の業務管理・組織運営に必要な経営情報が十分に提供されていることである.
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