味わいエッセー 出会い
病との出会い
衣笠 恵士
1
Keiji KINUGASA
1
1都立墨東病院
pp.1056
発行日 1989年10月1日
Published Date 1989/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541209709
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私は元来体だけは非常に頑健で,病気らしい病気は経験した事がほとんどなかったのですが,昭和59年の秋頃,胃の調子が思わしくなく,都立ガン検診センターで検査を受けたところ,膵頭部に径2cm大の腫瘤と,末梢の膵管が2.5倍に拡大しているのが見つかりました.自分でも画面を見て膵癌に間違いなかろうと覚悟しました.膵癌となると手術が大変ですし,術後の経過や予後についても大体わかっています.長い間ベッドに縛りつけられた生活をするのは嫌でしたし,幸いにまだ自覚症状も大してなかったので,このまま誰にも言わずに体の許す限り頑張ってしまおうと心に決めました.ところが院内の医師たちの知るところとなり,約4か月たった2月12日,60歳の誕生日の前日に,入院させられてCT,血管撮影,逆行性膵管造影などの諸検査をしてもらう羽目になってしまいました.
1週間の入院検査の結果は嚢腺腫で,フォローアップを条件に放免されましたが,癌とばかり思い込んで生活した4か月間,また短期間でしたが,患者の立場になって入院生活を経験出来た事は医者としての人生に得難い貴重な体験となりました.
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