味わいエッセー 出会い
死との出会い
池田 貞雄
1
Sadao IKEDA
1
1南大和病院
pp.516
発行日 1989年6月1日
Published Date 1989/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541209585
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自分の死との出会いはたった一度しかない.しかし他人の死との出会いは私共医療人にとって何度でもある.大学の医局時代からその後の数年間は,癌などの不治の病に倒れた人が多かった.開心術の初期にはいわゆる手術に成功しても患者さんが助からなかったということが多かった.消化管の縫合不全も助からなかった.この時期では救命し得ないという状態での死であり,主治医にとっても比較的に平静でいられたし,また家族の人たちも納得される場合が多かった.救命を試みたあげくの結果であり,ある程度必然でもあった.
それから20年を経た現在,私の出会う死は,いかに自分の患者に死を迎えさせるか,どのような形が適切であるのか,病院でか,在宅のままでか,と形を変えてきてしまった.圧倒的に多くは脳血管障害の末期であり,老衰でもある.心臓,脳の急性死でもなければ,癌の慢性死でもない.
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