精神病院わが病院づくり
わが陽和病院づくり—古くて大きな病院の改革への道(2)
藤沢 敏雄
1
Toshio FUJISAWA
1
1医療法人社団一陽会陽和病院
pp.250-253
発行日 1985年3月1日
Published Date 1985/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541208549
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新理事長の再建方針
さて,1981年8月17日にS新理事長を迎えて,労働組合との初回団交がもたれた.感情的な問題を除けば,団交の主要なテーマは,これまで労働組合と法人が交わして来た労使協約を新経営陣が遵守するか否かということであった.法的に言えば医療法人一陽会をS氏が引き継いだわけであるから,勿論,従来の労使協約を一方的にどうする,こうするということにはならない.しかし,既に述べたような協議約款をはじめ,前の経営者が意図的にとさえ思えるほど妥協に妥協を重ねた労使協約や諸々の労働条件に関する問題があり,労働組合に無縁な病院経営をこれまで続けて来たS氏にしてみれば,経営権の侵害とさえ感じられたのであろうし,一方,労働組合の立場からすれば,前経営者であるT氏一族がだましうちのように事前の協議もせずに病院売却を決めたことに対して,もって行き場のない怒りと,自分たちの手で病院を再建して,自主管理的な病院運営にもっていきたいという幻想が,強力な新しい経営者の介入によって破られたという挫折感が加わって,S氏に対して必要以上に事をかまえるというところがあった.
初回団交で,新理事長は従来の労使協約を遵守すると明言し,とりあえず労使は同じテーブルにつくことになったが,両者の歴史の違いから来るずれは埋らず,ぎくしゃくした関係が続くのである.この関係改善なしには,病院の安定した治療環境づくりは困難を極めるものだった.
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