人
両刃の剣 川崎医科大学学長 柴田進氏
山下 貢司
1
1川崎医科大学附属病院
pp.377
発行日 1982年5月1日
Published Date 1982/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541207727
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机に向かって執筆中の先生には全くスキがない.声をかけるのもいささか躊躇せざるを得ない.『おっ,先生,どうした』と緊張転じて慈眼と共に話が始まる.今なお時と場合によってはかつての厳しさを髣髴とさせるものがある.先生には二つの面がある.修身の典型ともみられる真摯と正直,これを取り去れば学問の厳しさのみが残る面と,本業を離れると温情あふれる庶民的な面である.
そもそも,私の先生との出会いは山口県立医大勤務の25年前にさかのぼる.私は病理の助手であり,先生は臨床病理の主任教授で,血液化学スペクトルの応用のもと,病態の分析を極めて客観的に行われ,若い医師たちの敬意の的であった.講義等も精力的で,簡単明瞭にして理路整然,説得力に富んだ話し口を,当時の私たちは柴田節と称し魅了されていたものである.その後大学の国立移管に際し,臨床病理学教室の存続に関して迂余曲折があり,互いに良き理解者であり互いに高い評価も惜しまなかった現在の川崎理事長のもとに移られ,共に御苦労の末,理想の医学教育を実現する大学を創設された.これが本学と聞いている.8年前私は再び,先生と共にここで学ぶようになったわけである.
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