発行日 2011年7月20日
Published Date 2011/7/20
DOI https://doi.org/10.15106/J03022.2011284932
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患者や家族の感情を理解し反応する共感性が高いことは、本来、医療者の望ましい条件だとされてきた。しかし同時に、共感性が高いことは医療スタッフの感情の疲弊にもつながる可能性がある。ここでは、"感情労働"(Beal et al.2006)、つまり自分の感情をコントロールすることを高度に求められる職務である、がん医療の看護師や医師の共感性とバーンアウトの関係について研究の展望を行った。従来の研究をみていくと、共感性が高い看護師や医師ほどバーンアウトを生じやすいという結果と、それとは逆の結果が報告されていた。結果の食い違いは、共感性の定義、共感性測定の尺度、対象となる医療現場で悲しみや怒りの感情が占める割合などの条件から生まれたと考えられる。それでも、悲しみの感情の頻度が高く無力感をもちやすいがん医療の病棟で、共感性が高い、"心やさしすぎる"医療者ほどバーンアウトを起こし現場から去ることがあるとすれば、医療の損失である。最後に、共感性が高いことが両刃の剣として医療者自身に傷を負わせないために何が可能かについても考察した。
©Nankodo Co., Ltd., 2011