今月の本棚
—柴山悦子 平島裕子 著—「医療ケースワークの初歩的実践」
上野 博子
1
1武蔵野赤十字病院
pp.956
発行日 1979年11月1日
Published Date 1979/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541207020
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現場ワーカーの実践報告
実践からの理論化の試み
本書を興味深く読んだ理由の一つは,日常ケースワークを実践している現場のワーカーによって書かれたものであるということと,もう一つは医療ソーシャルワーカーの専門職業化(資格制度の確立)をめぐる動きの中で,その専門性や業務内容などの明確化が求められてきている状況を踏まえ,その明確化を意図してまとめられたという点である.つまり本書は,「専門性は今日に至る実践の積み重ねの中に十分存在する」という確信に基づき,「日常業務をそのまま提示してみる」という方法をとり,一つ一つの事例から,ワーカーの判断,知識,技術などを抽出し,ケースワーカーの役割,業務の「範囲」を求めようとの意図で書かれたものである.実践からの理論化の試みは,ともすると実態報告や事例報告にとどまってしまいがちである.したがって,本書において,上述の意図がどれほど達成されているかということが,私にとって特に関心の持たれたところである.
本書は三章から成り,第一章「専門性の確立とケースワーカーの役割」は,本書をまとめるに当たっての筆者の意図の説明であり,第二章,第三章が,本書のいわば実質的な内容ともいえる部分で,62の事例で構成されている.
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