精神医療の模索・5
デイ・ケアについて—経験的・主観的に
岡上 和雄
1
1国立精神衛生研究所
pp.423-427
発行日 1978年5月1日
Published Date 1978/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541206546
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
最近は,肢体不自由児や精神薄弱児の通園施設がつくられ,就学前にそこに通う幼児も増えた.学齢期になれば普通学校のほかに養護学校もつくられ,卒業後のための通所授産施設もできはじめている.また,各地に老人福祉施設が建てられ,そこで日中を過ごすお年寄りも増えてきた.これらは,訓練,保育,教育,授産,レクリエイションと,内容に違いはあれ,「通い」という点では共通している.精神科デイ・ケアも,形の上では,これらと同じように,日に数時間の共同活動を含んだ「通い」に過ぎない.だとすれば,それは模索でも何でもなくて,当り前のことではないか,とみられるかもしれない.
しかし,事実は,そう簡単ではなく,多くの国々で,そこにたどりつくまでに,数10年,100年,あるいはそれ以上の歳月を必要とした.その歴史的ないきさつ,技術的な背景,設備,人員などについては,既刊のもの2,3,4)にゆずり,ここでは,経験的,そして,たぶん,きわめて主観的な立場で,私にとっての思案の節目とでもいったものを取り出してみたいと思う.制度的,歴史的,さらに環境的にかなり独自なものをつくり出しているわが国の医療事情のもとでは,デイ・ケアの位置づけもよその国と違うものがある,と感じられるからというのがひとつの理由で,ほかは,もっぱら,力不足・知識不足によるのだが--.
Copyright © 1978, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.