院外活動日誌
難病患者の巡回診療
別府 宏圀
1
1東京都立府中病院・神経内科
pp.68
発行日 1978年1月1日
Published Date 1978/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541206431
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○月○日
9時30分病院出発.今日はIさん(MSW)が同行.車の流れは比較的順調.車の中で,第一の訪問予定者K.M.さんについての最近の問題点をIさんと検討.
10時10分M宅到着.いつものように窓際の小さな椅子に腰かけている.かなりすすんだALSの女性患者で四肢はすでに全く動かせない.首をまっすぐに保持することさえ困難で頭を椅子の背にもたせかけるようにして,身じろぎもせずに坐っている.夫は毎朝患者に食事をさせたあと,この椅子に患者を坐らせて出勤する.あとは夕方夫が帰宅するまでこの姿勢が続く.椅子のわきにはちょうど口の届く位置あたりに小さな棚が作ってあり,ストローを差したビンがおいてある.ビンの中には,口の乾きを抑えるに足る程度の水が満たされている.時々嫁ぎ先から娘が赤ん坊を連れて看病に来るようになってから,最近は少し楽になったという.食事に時間がかかるようになってきたとの訴えは,おそらく球症状の出現を意味するものだろう.
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