医療提供システム論入門
2.システムとしての医療のとらえ方
紀伊国 献三
1
1病院管理研究所
pp.60
発行日 1974年3月1日
Published Date 1974/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541205300
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システム論研究の背景としての‘専門化’
システムという言葉ほど広範囲に使用される言葉も多くあるまい.流行語として厳密な意味もなく使用されている例も少なくない.このことは,現代においての問題の多さ,複雑さを意味するものであるかもしれない.おそらくシステムとは,プラトンの昔から部分の集合物,しかも特定の目標を持つ各部分の相互関連のある集合物としての概念として存在してきたものであるが,現代での特徴はシステムそれ自体ひとつの研究対象として考えることに求められるようである.
医療の世界においても明らかなごとく,近代における急速な専門化の進行が,その背景としてあることは明らかである.多種多様の専門化が必要悪とも思える形で分断化・断片化を生み出し,いわゆる木を見て森を見ない状態を生み出してしまっている.Ashbyは,‘科学は過去2世紀にわたって本質的に簡単なものか,簡単な構成分子に分析できるものを対象として究明してきた.そしてこの方法では多くの場合,複雑な機構に行き当たると根本的に通用しなくなる.1つの要素が変化すると,全体の構成物の変化が見られるものの研究は避けられて来た’と説明する.
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