特集 私立病院のゆくえ
私立病院経営の現状
一条 勝夫
1
1自治医大・病院管理学
pp.28-32
発行日 1974年3月1日
Published Date 1974/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541205291
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はじめに
わが国の医療制度は一貫して私的医療機関を主流とするものであったことは,改めて説明するまでもないことである.しかし,診療所の段階であるとしたなら,世界的傾向であって,とくに違わないとしても,病院が医師の個人的財産から成り立ち,企業的に経営されるとなると,あまり一般的現象とはいえなくなる.去る47年8月,アメリカ病院管理者学会が日本の医療制度を勉強しに来たとき,わが国の私立病院の隆盛ぶりと,それに対する政府の保護育成政策を聞いて,きわめて奇異な感じをいだいたようであった.わが国の歴史的な背景とか国情を説明しても,なかなか腑に落ちぬ顔つきであったのである.
わが国と同じようなところがほかにはないわけではないであろうが,欧米の病院のあり方と比べてみて,かなり特異な類型をなすことだけは事実である.医療のあり方として,またその経済的基盤のあり方として,医療の進歩普及にとって,当を得た制度であるか否かは,問題のあるところである.この意味で,わが国ではくり返し論義され,また実際的に公立私立の闘争(?)の歴史をつくってきたのである.しかし,そうした事実は事実として,なおかつ私的医療機関が主流をなしているという現実はいまだに変わりはないのである.
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