特集 老人医療費無料化の影響
病院管理面への影響
村松 睦
1
1財団法人・榛名荘病院
pp.34-37
発行日 1973年12月1日
Published Date 1973/12/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541205179
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はじめに
老齢化社会に対する福祉政策の目玉ともいわれた老人医療費無料化は,その実施1年未満にして早くも功罪が強く評価され,当然のことながら,準備不足・拙速の結果からきわめて多くの問題をひきおこした.このあまりにも医療供給側無視の施策により,外来では数でこなす粗診,薬害医療の増大と入院治療はまさに野戦病院的内容低下の促進となり,ついに自治体病院協議会の報告に明示されたごとく,本法のもたらしたものは,看護婦不足への拍車,一般入院者の困難化,ペーパー作業の増大などのデメリットのみが強調され,早くも票集め医療政策の馬脚があらわれた,ともいわれている.しかし,見方をかえれば,この制度のもつ各種の矛盾により老人医療問題の真相を浮彫りにし,さらに医療のありかたを国民に問うPRをしてくれたメリットもある.
しかし,管理者たるものはかかる皮肉なことのみをいってはおられない.現実問題として押し寄せてくる老人群を放置はできないので,各施設とも,いつものごとく職員の汗で何らかの対策を試みているのが現状である.
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