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—富岡 次郎 著—「日本医療労働運動史」
野村 拓
1
1阪大医学部衛生学教室
pp.95
発行日 1973年1月1日
Published Date 1973/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541204894
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未開拓の分野にいどんだ労作
医療労働運動ということばをきいたとき,さて自分は労働者なのかと考えてみる医療従事者がかなりいることだろう.また,世間が医療従事者を見る目も,ともすれば聖職というわくをはめがちである.そして教育関係者と医療従事者とは,もっとも聖職のわくをはめられやすいし,またそのような方向への世論操作で,しばしば苦境に追いつめられてきた.
しかし,聖職の名のもとに医療従事者をしめつけ,低医療費政策,医療合理化政策を強行することが,国民の医療上の要求を無視し,国民の健康問題に破壊的な影響を与え,かつ医療従事者の生活と生存を脅かすものであることがわかってきた場合,医療従事者は医療労働者としての自覚をもって闘わざるをえなくなり,また患者,国民もこの闘いを支持するようになる.この過程は多くの困難を含み,また曲折に富んだ歴史を構成するわけだが,富岡次郎氏の"日本医療労働運動史"は,豊富な原資料を駆使しながら,医療労働者の闘いと成長の歴史をまとめている.しかも,著者が指摘しているように,‘医療労働運動に関する研究は現今のところ未開拓である’がゆえに,まことに価値の高い労作といわねばならない.
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