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—左奈田 幸夫 著—病院管理新書11「外来予約システム」
弓削 経一
1
1京都市立病院
pp.117
発行日 1971年3月1日
Published Date 1971/3/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541204278
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海外にも目を向けての研究
日本人には合理性は不向きであるとある思想家が投げ出しているが,病院外来の混乱はまさにこの指摘にあてはまる思いがする.相も変わらず新聞の投書欄には,なぜ待たされるかの苦情がのせられ,しかも‘わかっていながら検討せられない’(本書13ページ)のである.しかし左奈田幸夫院長は,この本で,日本人にも合理性は,必ずしも不向きではないことを立証している.指導者の努力によっては,日本の病院外来の宿命のようにいわれている‘3時間待たされて3分間診察’の悪評を打ち消すことができる.
著者は,日木の病院外来の混乱を外来廃止論をとらず,逆に外来発展論の立場で予約制によって損失なく解決できることを,この本でいろいろの角度から証明し,また解説している.この努力を払わずに,うるさい外来はやめてしまえというようなやり方は,著者が心底から反対したいところであろう.外来予約制への努力には著者も表明しておらず,私も詳しく論ずる紙面をもたないが,患者,病院職員に対する人権尊重の思想が根底に横たわっている.したがって外来の混乱を見つつ,そこから上がってくる利益に影響することをおそれて,予約制を無視するのは罪悪とさえ言える.ただし,著者はその部分にも心配することがないことを証明してくれている.
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