ホスピタルトピックス 特殊病院
ビルマ,タイ,ホンコンの麻薬事情
岩佐 金次郎
1
1慶大神経科
pp.94-95
発行日 1965年10月1日
Published Date 1965/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541202689
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東南アジア地域の多くの国と同様に,頭書の国内では,阿片を吸煙する。阿片を食べる習慣も残ってはいるが,多くはない。都市の富有階級の人々にも,中毒者はすくなくないが,特に辺境の村落に住んでいる貧農たちや,ホンコンでは苦力たちの中毒者を容易に根絶できないし,新しい中毒者も出ている。椰子酒やどぶろく(Country spirit)で酔った後,出かけていく賭博場(彼らは賭博が大好きである)もなく,娼家もない辺境地では,好奇心も手伝って,Kunbon-pipeと呼ばれる方法で阿片を吸ってみる。ケシの葉を手製の竹パイプで吸うのである。金は一銭もかからない。これで阿片吸煙の味をおぼえると,容易に調整阿片(Prepared opium)を吸煙するようになり,金がある時は阿片煙膏を,手持金のすくない時は阿片煙灰を吸うようになる。後者の一粒は数時間の軽麻酔状態を催すが,煙灰や煙灰からの煙膏は,有毒性が強く,急速に中毒症をひき起す。そして彼らの妻や同胞も,同じように,中毒者になる場合が多い。
ビルマ,タイ両国の麻薬取り締まりは,最近まで,きわめてゆるやかであった。ビルマでは栽培の規制と運搬の取り締まりを,昨年頃から,やや厳重にやり始めた。治療施設はなく,精神病院への収容も積極的には行なっていない。国連委員会へ出席するようにはなったが(従来はオブザーバーさえ送っていなかった)信頼すべき統計も発表されていない。
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