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病院は何のためにあるか—「国立病院改善論」を批判する
金子 嗣郎
1
1都立松沢病院
pp.69-71
発行日 1964年1月1日
Published Date 1964/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541202278
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I
「病院」7月号に所載の「国立病院改善論」1)(竹山正憲氏)を読んだ。確かに現在において国立病院の持つ矛盾・欠点は多く,それは外的には旧軍病院の老朽施設そのままのものが多いことに象徴され,また内面的には,旧軍病院がそのまま国立病院となったために,国立病院はいかにあるべきかについての充分な思索がなされなかったことにもあらわれていると言えよう。
こうした矛盾・欠点は国民のための医療を進ある上において克服されねばならないが,そのためには単に国立病院のもつ矛盾のみならず,現代の医療のもつ矛盾をも認識し,医療は(そしてまた従って病院は)何のためにあり,何のためにあるべきかについての正しいヴヘイジョンなしには正しい答えが得られないことは当然であろう。つまり,ただ単に現在における医療の矛盾を小手先のみで改善するということでなく,わが国において医療はどうあるべきか,どうありうるか,という問題を考えながら,この矛盾を正そうとしなければならないのである。
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