特集 診療管理
診療監査—病院診療業務の自己批評
橋本 寛敏
1
1聖路加国際病院
pp.17-25
発行日 1963年2月1日
Published Date 1963/2/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541202052
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会計監査はいずれの事業体でも励行されるが,業務監査はそれ程励行されないのは業務の種類によって難易があるからであろう。診療業務の監査は最もむつかしい部類に属する。患者を対象とする診療が効果を挙げたか,過失があったかを正確に見極めることは極めて困難であり,監査を行ってもその確実性が疑われる場合が少くない。診療業務は医師が患者と一対一で行う隠れた業務であり,開放的でない。それに病院では医師が一人でなく集団をなして一人の患者を取扱い,それに技士がつき,看護婦が看護をし,それを補助する従業員もある。それで診療業務を徹底的に監視することは極めてむつかしい。病院では会計監査は励行されるにも拘らず診療監査が容易に行われない理由はここにあるのだろう。しかし病院管理の上から見ると,会計ばかり整っていても,主要機能である診療が乱れて効果を挙げないのでは何にもならない。診療監査の方が会計監査よりも遙かに重要であろう。
マッケカーンMacEachernは早くから診療監査の必要を唱えてその方法について研究したらしいが,なかなか纒らなかったと見えて,晩年になって初めて著書にこの項目を書き加えた。アメリカでも診療監査はどの程度徹底して行われているか疑わしい。病院開設経営者が会計監査と同時に診療監査を行うとすれば,監事に診療監査のできる人がなければならないが,その適任者は極めて少い。病院管理者が自ら診療監査を行ったとしても,米国ではそれが行い難い。
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