特集 人間関係
研究
病院における人間関係
総婦長
杉 政孝
1
1立教大学社会学部
pp.41-45
発行日 1962年8月1日
Published Date 1962/8/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541201960
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1.公的な地位体系と総婦長
組織における人間関係は原則としてそこにおける公的な職務および地位の体系との密接な相互関係において成り立つ。とくに,いわゆる人間関係論で重視される非公式な人間関係は,公的な職務や地位の組織の線にそって,あるいはその間隙を縫って,形成されることが多い。したがって,組織における人間関係を理解するためにはまずそこに形成され機能している公的な職務と地位の体系をみておくことが必要となる。まして,公的な組織が整備されていない場合にはそこにおける非公式な人間関係は組織の合理的能率的な運営に対してむしろマイナスの役割を果たす場合が多いことを考えれば,その必要性はいっそう大きい。
さて,総婦長は病院における公的な職務・地位の体系をどのように認識しているであろうか。この点について,今回の調査に含まれている総婦長と他の部局の管理者との関係を示唆する諸問題の結果を綜合的に判断すると,各部局の職務関係とそれぞれの部局の管理者の間の人間関係とが必ずしも合理的な平行関係になく,したがって総婦長,医長,事務長という三管理者の間の地位序列や職務関係も混乱している場合が少くない。たとえば,総婦長のなかで,医師に関する苦情をその医師本人かあるいは直接の管理者である医長に訴える者が46%にすぎず,50%は院長に,また4%の少数ではあるが管轄の異なる事務長に訴えている。
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