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温泉療養と医療保障
伊藤 久次
1
,
岡崎 稔
1
1国立伊東温泉病院
pp.513-520
発行日 1960年7月1日
Published Date 1960/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541201685
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わが国には約1,200に達する温泉地があり,多数の人々により日常生活の中に欠くことのできないものの1つとして広く温泉は利用され,昭和33年度には延5,000万人の温泉利用者があると推定されている。しかしこれ等は温泉を休養あるいは保養として利用しているものが大部分ではあるが,療養を目的のものも少なからずある。これ等温泉療養者は泉質による適応と伝統的効能を信じて温泉に集まつて来る傾向が大であり,医師の指導によつて来たものは必ずしも多くないようである。もしも一般医師が温泉療法をよく認識し,指導すれば患者はさらに多く温泉地を訪れるであろうし,また一般医師が依頼出来る療養施設が温泉地にあれば,なおさら温泉療養患者はそれに集まるであろう。国立伊東温泉病院の入院患者(リウマチ)の状態はこれを裏書きしていると思われる(第1表)。
さて温泉病院で取り扱う患者は大体慢性疾患の患者が多く,例えば伊東における状況は第2表のようであつて,これらは必ずしも生命に直接ひびくものとはいえないし,また死亡率も低いが難治なるが故に個人的にも日常生活は暗くなり,作業能率の低下のため自他ともに多大な影響を受け,団体的にも個人的にも莫大な経済的損失を招くものであるから,すみやかに社会的経済的道徳的心理的に正常な生活に復帰し得るように手段が講ぜられなければならない。
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