病院長プロフイル・73
二宮恵一氏—愛知県公立陶生病院長
pp.278
発行日 1960年4月1日
Published Date 1960/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541201644
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名古屋の東北20粁,山間の谷間に,黒い煙,白い河水と,陶土のほこりによごれた瀬戸の町がある.其の旧市街の西端に,鉄筋2階建の明るいアメリカ式の診療棟と,4階建の清楚な病棟が,小高い丘の上に,偉容を浮び上らせている.これが瀬戸市外2カ町村の一部事務組合に依つて運営されておる公立陶生病院である.
この病院が,昭和11年病床35を有するみすぼらしい産業組合病院として,発足してから年を閲すること,ここに23年,共の間或は県農業会により,或は地方農協組合連合会によつて,経営されて来たが,昭和27年市町村組合に移り,今や病床500を有し,外観内容とも,地方に誇り得る綜合病院として市民に絶対の信頼をかち得るに至つたのは,二宮院長の崇高なる人格と,高邁なる識見と,卓越せる医術と,たゆみなき努力の賜物に外ならないのである.氏は愛媛県の出身で,昭和4年名医大卒業,岡田内科教室にあつて,研鑚を積むこと7年,34歳の青年院長として,着任以来今日に至る長い間,全魂を打ちこんでの献身的努力が実を結んで,市民からは慈父の如く仰がれ,慈母の如く慕われ,世にもまれな氏の後援会が結成され,一面病院の内容充実のために,既に1千万円に近い最新医療器の寄付があり,他面氏の家庭に関しても,後顧の憂なからしむる方途が講ぜられつつあることは,稀に見る美挙であるとともに,氏に対する信頼と,期待が如何に大であるかを物語つて余りあるものといつてよかろう.
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