特集 農村病院
50床前後の公立農村病院の実状とその経営診断—特徴を異にする2つの病院について
石原 信吾
1
1虎の門共済病院
pp.283-290
発行日 1959年4月1日
Published Date 1959/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541201496
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はじめに
新国民健康保険法の実施にともない,待望の国民皆保険は,兎に角一応実現の見とおしが立つこととなつたが,この制度を真に実効あるものとする為の医療機関の普及とその内容の整備については現在未だしの感が深い。このことは,今後特に農山漁村就中僻地医療対策の問題に施策の重点が移されなければならぬことを思わせる。その意味で,公立農村病院乃至国保直営医療機関の問題は最も重要な今日的問題の1つとして,今や真剣に取り上げられるべきものと思う。
病院を経営管理して行く場合,その病院の所属種類,規模等により,それぞれ各種の困難が伴うことは事実であるが,それが,公立の一般病院で特に小規模の場合は,その困難性は,宿命的に且つ際立つた姿で現われて来るようである。ところが,公的農村病院や国保の直営病院は,そうした小規模病院が大部分であつて,その約8割が100床以下であり,半数以上が50床以下という実情である。これは,その地区病院としての性質上,必ずしも大きな規模を必要としない為であろうが然し一方,その公的性格上,機能水準だけは出来るだけ高いことが要求される。此処に,小さな規模に高い水準を盛るという非常な困難が生ずることになるのである。ただ,若し経済的事情さえ許すならば,或は,案外容易にそれも出来るかも知れないが,多くの場合,地方公共団体の経済的弱体性がそれを許さない。
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