特集 Dr. MacEachern
マツクさんのこと
小西 宏
1
1病院管理研修所
pp.10-11
発行日 1956年1月1日
Published Date 1956/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541201050
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シカゴという所はアメリカ第2の大都会であり,日本で云えば大阪というアメリカの心臓部でもあるので単なる見物としてもスキツプできない所であるが,こと医学に関しては,アメリカ医師会の本部やアメリカ病院協会の所在地でもあり,決して見逃せない土地である。併し,若しマツクさん(Dr. MacEachernの愛称)がここにいなかつたとしたら,恐らく私はあれ程の期待に胸をふくらませて,この汚い風の強いまちを訪れたかどうかわからないと思う。短い滞米期間の約1/5に当る日数をここに割いたのも,偏えに彼の声咳に接するため,と云つて過言でない。彼を1898年に建てられたというまるでアメリカという国に似つかわしくない古ぼけたアメリカ病院協会の一室に,同行の中村事務官と2人で訪ねたのは,1952年も押しつまつた12月16日の朝であつた。前日に連絡しておいたので,8時にドアを叩くと既にマツクきんは出勤して待つていてくれた。机に向つて一所懸命何か書き物(Hospital organiza-tion and managementの改訂をしているとのことだつた)をしていたが鋭い眼でこちらをギヨロリとにらむとすぐ立つて来て,稍々猫背の高い背を屈める様にして右手をつき出した。そこで初対面の挨拶をしたのだが,その声の大きいのには一驚した。あとでわかつたことだが,彼は少し耳が遠い。それで電話をかけるにも部屋中に轟く様な大きな声を出す。
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