連載 鉄郎おじさんの町から病院や医療を見つめたら…・67
在宅ホスピスケアを伝える―②絵本の完成から配布へ
鉄郎
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1NPO法人アットホームホスピス
pp.322-323
発行日 2013年4月1日
Published Date 2013/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541102505
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子どもに本物を残す
なぜ,低年齢層に「死」や「在宅での看取り」を伝えようとするのか.理由は単純であり,僕が16歳と22歳の息子2人とともに,妻の看取りをしたからだ.息子たちにすれば,そんな年齢で母との別れに向き合うというのはつらすぎる経験だっただろう.しかし,かかりつけ医が訪問診療を断り,他の医者や訪問看護師を紹介してくれることもなかったため,家族が力を合わせるより道がなかったのだ.
今思えば,そこで体験した精神世界こそ,妻が息子たちに残した,かけがえのない遺産だったのだ.前回,『いびらのすむ家』のラストで子どもたちがお母さんの死に装束として「普段着」を選んだことにふれたが,実際に息子たちがそうしたのも,この遺産に動かされた結果だと僕は考える.そんな発想は大人にはない.そして,この遺産は後世に残さないといけないと思った.それも,どういうわけか大人たちにではなく,子どもたちに残そうと思った.そこで浮上してきたのが,媒体を「絵本」にするという構想だ.
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