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はじめに―医療計画の黎明,発展,そして新たな視座へ
わが国における医療計画制度は,昭和60年の医療法改正に伴って初めて規定された地域医療計画をその端緒とし,その後,累次の改正に伴い,その形態を少しずつ変えるとともに,その機能についても変遷を重ねてきた.
すなわち,多様化,高度化する国民の医療需要に対応して,地域の体系的な医療提供体制の整備を促進するため,①医療資源の効率的活用,②医療関係施設相互の機能連携の確保等を目的として,昭和60年12月の第1次医療法改正(昭和61年8月施行)に基づき医療計画は制度化され,2次医療圏ごとの必要病床数が算定されることとなった.
その後,平成9年12月の第3次医療法改正(平成10年4月施行)により,日常生活圏で必要な医療を確保し,地域医療の体系化を図る観点から,医療圏の設定および必要病床数に関する事項に加え,①地域医療支援病院の整備の目標等に関する事項,②医療関係施設相互の機能の分担及び業務の連係等に関する事項等を2次医療圏ごとに定めることとし,医療計画制度の一層の充実を図った.
さらに,平成12年12月の第4次医療法改正(平成13年3月施行)では,必要病床数という用語を基準病床数に改め,「その他の病床」が新たな病床区分である「療養病床」および「一般病床」に移行される期間中のものとして,算定式を改正した.また,これと関連して,療養病床および一般病床の病床区分が定着したことに伴い,平成17年7月に両病床それぞれの算定式でもって算定するように省令改正を行った(平成18年4月施行).
このような流れの中,平成18年6月の第5次医療法改正(平成19年4月施行)では,高齢化の進展による生活習慣病の増加や地域医療の確保における諸課題に対応するため,がん,脳卒中,小児救急等の主要な疾病および事業(「4疾病5事業」;後述)ごとに,それぞれの連携体制を構築するための具体的な方策を医療計画に定めることとした.
本稿においては,このようなわが国における医療計画の誕生,変遷の歴史を踏まえ,今,新しい医療計画によって何が変わり,その結果,どのような医療提供に係るフレームを目指しているのかについて概説するとともに,それらの中で重要なキーワードの1つとして位置づけられている地域医療連携に関してもその考え方,目指す方向性等について言及することとする.
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