短期特別連載 苦情対応システムの実際とその評価―臨床現場の事例から
第1回 「意見活用システム」の意義・構造
佐伯 みか
1
,
田中 知雄
2
Mika Saeki
1
,
Tomoo Tanaka
2
1財団法人東京都医療保健協会練馬総合病院質保証室
2医療法人社団東光会戸田中央総合病院
pp.340-344
発行日 2004年4月1日
Published Date 2004/4/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541100805
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◆本連載のねらい
患者から時々苦情が寄せられていた医師が,ある時,筆者に言った.「こっちだって人間なんだから機嫌が良い時も悪い時もあるよ.いつも患者の機嫌とれなんて言われたって,できるわけないよ.」「意見活用システムなんて,いっそのことないほうが良いですか?」そう筆者が聞くと「それはないよ.前だったら “まあ,いっか” って思っていたことも,また投書されると思うと,身が引き締まるからね.効果はある.」ちなみに,この医師への苦情は,徐々に減ってきている.
また別のある医師が,こう語った.「最初,自分の名前が書かれている苦情を見た時は,怒りがこみあげてきて全く受け入れられなかった.こんなの,たった一人の患者の言うことに過ぎない.他の患者はみんな満足しているんだから,この患者がおかしいんだって思った.でも,2~3日して,自分の間違いに気付いたんだよね.今まで自分は患者さんを治したいと思って生物学的にしかみていなかった.でも患者さんは心理・社会的な面ももっているんだよね.そんな当たり前のことに気付かせてくれた患者さんに,今はものすごく感謝している.」
患者の苦情への対応が,医療提供側にとって排除すべきものではなく重要なものであることは,近年になって少しずつ認められ始めている.医療・サービスの質向上・保証の契機になるし,患者満足や職員満足にもつながるからである.長い目で見ればコスト削減にもつながる.しかし,実際に投書への対応を経営の「最優先課題」にあげる医療機関はどれだけあるだろうか.そのような医療機関が少ない理由は,以下の三つに大別できると考えられる.
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