特集 持つ病院,持たざる病院―法人制度から資金調達まで
サービスプロバイダーを求めて―多摩病院 PFI を事例に
古澤 靖久
1
1株式会社株式会社日本総合研究所 創発戦略センター
pp.460-464
発行日 2006年6月1日
Published Date 2006/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1541100311
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■公立病院における PFI 活用の背景
地域中核病院として高度医療機能,救急救命機能,小児医療機能等提供の使命や電子カルテ等 IT 整備のために新規投資を必要としながらも,医療費抑制/人件費硬直化のトレンドの中で病院収支の悪化は進んでいる.不採算医療の担い手である公立病院の多くは,独立採算事業として成立しておらず,公共財政負担により収支均衡を図っているが,昨今の地方自治体の財政難に加え,公共サービス効率化に関する国の構造改革の動きを背景として,公立病院の民間開放(PFI : Private Finance Initiative / 指定管理者制度/民間委譲)の動きは拡大しつつある.一例として,弊社が昨年夏に実施したアンケート(有効回答:90 自治体)によれば,PFI について 63 %,指定管理者制度 60 %,民間委譲で 34 %が「実施を検討している」あるいは「関心がある」と回答している.
本稿で取り上げる PFI に関しては,第 1 フェーズと呼ばれる高知医療センター(648 床,2005 年 3 月開院),近江八幡市民病院(407 床,2006 年 4 月開院),八尾市民病院 (380 床,2004 年春)の 3 案件(以下「先行案件」)すべてが既に開院しており,運営フェーズに入っている.一方,第 2 フェーズのモデルとして,本稿で事例として取り上げる東京都の病院 PFI 第 1 号案件の多摩広域基幹病院(仮称)および小児総合医療センター(仮称)整備運営事業(以下「多摩病院 PFI」)は,2005 年 3 月末から事業者選定が開始され,2006 年 1 月末に落札者を決定したところである.
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